道ノ尾(みちのお)とは何?
長崎地名的散歩
長崎の市街地から国道206号線を北上すると、
道路は道ノ尾(みちのお)交差点で、各方面へ
分岐する。高架部分の下では、JRの線路まで
交差している。

ここは長崎の交通の要衝である。
たぶん昔も時津街道の追分だったろうから、
「道ノ尾」は、交通地名だと思っていた。
交通地名には、三本松や立石と言った街道
沿いの目印や、〇〇道とかの、行き先を示す
ものなどがある。
しかし、交通地名であれば類例があるはず
なのに、ネットで探しても「道の尾」という
地名は他には見つからない。
それに「道の尾」の意味を普通に考えると、
道が通る尾根、または、道の終わりとなるが、
状況的にどっちも当てはまらない。
広島県の尾道(おのみち)とも関係なさそう。
いろいろ調べると、地名に「道」がついても、
多くは道路と関係ない事が判ってきた。
よーし、今回はシリアスに進んでいるぞ。
この調子で最後まで行こう!
ボクちゃんをアホだと思っている奴らを
見返してやるんでぇ~~い!
(↑謎の被害妄想と決意)
道ノ尾は元々、比較的狭い地域を指す小字の
地名だったはずだが、長崎県の小字地名総覧
には記載が無い。
場所は、断片情報をいろいろつなぎ合わせると、
おそらく浦上水源地の北側のほとり、道ノ尾温泉や
ファミリーマートの近辺らしい。

JRの駅や道の尾交差点からは離れているが、
いつ頃からか、広い範囲の地名になったようだ。
明治に発見された道ノ尾温泉が有名に
なった影響だと思うのだが、よくわからない。

道ノ尾温泉は、むかしは外国人も訪れるほど
大繁盛したらしい。創始者のオヤジは、地域に
いろいろ貢献し、近くに道ノ尾駅が出来たのも
彼のおかげだそうだ。詳しくはググられたし。
(あ、めんどくさくなったな!)

これは源泉。 温泉の近くの山は、「湯川」という小字地名。
現在は、寂れて銭湯風情の道ノ尾温泉だが、
長与町の歴史を作ってきた、大切な遺産だ。

「ミチ」を古代地名語源辞典で調べると、
「ミチ・ミツは「満ちる・一杯につまる」の
意味で、谷や湾の奥のつまった所か、と、自信
なさげなモヤッとした解説だった。
地名の末尾のオは、尾根か、又は地形の終わり
部分を示す「尾」の場合が大半。
小字の道ノ尾の場所は、尾根ではないので、
谷の奥の終わりの所だろう。
う~ん、「奥」と「終わりの所」が重複して
いる感じでちょっと違和感があるなあ。
だが、
道ノ尾が「谷の奥」にあるのは、間違いない!
そばにある浦上水源地は、かつては、
長く大きな谷だったからだ。

明治の帝国陸軍の地図(昭和初期に改定)より

Googleマップより
今は水源地になったこの谷へ、周囲の山々から
川の水が流れ込んでいる。満水になると下流側の
ダムから放水され、長崎バイパスの登り口付近で
川平(かわびら)川と合流し、浦上川へ流れこむ。


ダムから見ると、小字の道ノ尾は、谷の一番
奥まった所に当たることになる。

つまり、道ノ尾とは、
「谷の一番奥のどん詰まりの所」
という事らしい。
以上!
「え?そんだけ?」という話で、今ひとつ
へえ~と納得できる感じではない。
では、仕方がないので、私が変わりにへぇを‥、
ハイ。こかなくていいですよね?
そんなある日、
長崎県の小字地名総覧を見ていたら、長崎市の
潮見町にも道ノ尾という小字があるのを見つけた!

おお。これは貴重な同名の例だ。
一覧表には載っているが、地図には記載が無い。
すっ飛んで行って地元の人に場所を尋ねた。
人の良さそうな農家のおばあさんが、
海岸から続く大きな谷の奥の、
ブルドーザーの停まっとるニキ
と、ピンポイントで教えてくれた。

Googleマップ 3D地図より
谷の一番奥からぐるりと回りこんだ、もっと
高い所だった。県道はこの先で切り通してある
ので、開通前はここで行き止まりだったと思う。
総覧には、道ノ尾(みちのお)と書かれている
が、地元の人は、ミツノーと呼んでいた。
やはり「満つる」で合っているようだ。
満ちたあとはこぼれるので、「一番奥」ではなく、
「一番上の縁」というニュアンスかもしれない。
長与の道の尾も、背後にもっと高い所がある。
これでまあまあ、納得できそう。
話は浦上水源地に戻る。
以前、テレビで、浦上水源地のダム下の、
川の合流地点のところに、正体不明の神様が
祀られていると言っていた。

川の合流地点という地形状況から考えると、
水に関する神様ではないかと思い、今回見に
行ってみることにした。
水源地から急坂を下っていると、ダムの傍に
そびえる高い崖の上に水神と書かれた
鳥居が見えている。

おお、やはりそうかも!
下の祠は、その遥拝所的な所ではないのか?
期待はふくらむ。 股間‥、いや何でもない。
あーこれこれ! この小丘の上だ。
え~と、階段は‥?

ぬええ~?のわんじゃくりょわあ!!

登り口が、絶壁イィ~~~ッ!!
切り立った崖に、足を掛ける僅かなくぼみが
あるだけ。しかも土!鉄の鎖を伝って登り降り
するしかない!
確かに上に石造りの祠の屋根が見えるのだが、
簡単に近づけないもどかしさ。
5年前ならヒョイヒョイ登っていただろうが、
今は足が、腕が、いや鎖がもたんかも知れん!
(やせなはれ、やせなはれ!)
町なかで、崖から滑り落ちて泥だらけのまま
仰向けに倒れて失神するのはイヤだ。
仕方がない。
今回は、登るのは勘弁してやるぜ!
それにしてもなぜこんな、簡単に登れない
鬼階段にしているのだろう。
上に、特選エッチ本を隠しているのだろうか。
さて!今回の結論としては、
道ノ尾は、
「谷の一番てっぺんの行き止まり」
ということで、ピポロポ星の皇帝ウポポペロロ
様に報告するとしよう。
さらに類例を探したいが、ネットでアニメを
見なければならない。私はけっこう忙しいのだ!
そういえば‥、佐賀から福岡へ抜ける近道の
三瀬(みつせ)村も、山に囲まれた谷だよなぁ。
熊本県芦北町の道川内(みちがわち)も
両側に山が迫る、狭い谷間の川沿い。
うう~む。ならばあそこは‥。
こうしてまた、地名オタクの
夜は更けてゆくのであった。
参考文献:
古代地名語源辞典 楠原祐介 編
長崎県の小字地名総覧 草野正一 著
道路は道ノ尾(みちのお)交差点で、各方面へ
分岐する。高架部分の下では、JRの線路まで
交差している。

ここは長崎の交通の要衝である。
たぶん昔も時津街道の追分だったろうから、
「道ノ尾」は、交通地名だと思っていた。
交通地名には、三本松や立石と言った街道
沿いの目印や、〇〇道とかの、行き先を示す
ものなどがある。
しかし、交通地名であれば類例があるはず
なのに、ネットで探しても「道の尾」という
地名は他には見つからない。
それに「道の尾」の意味を普通に考えると、
道が通る尾根、または、道の終わりとなるが、
状況的にどっちも当てはまらない。
広島県の尾道(おのみち)とも関係なさそう。
いろいろ調べると、地名に「道」がついても、
多くは道路と関係ない事が判ってきた。
よーし、今回はシリアスに進んでいるぞ。
この調子で最後まで行こう!
ボクちゃんをアホだと思っている奴らを
見返してやるんでぇ~~い!
(↑謎の被害妄想と決意)
道ノ尾は元々、比較的狭い地域を指す小字の
地名だったはずだが、長崎県の小字地名総覧
には記載が無い。
場所は、断片情報をいろいろつなぎ合わせると、
おそらく浦上水源地の北側のほとり、道ノ尾温泉や
ファミリーマートの近辺らしい。

JRの駅や道の尾交差点からは離れているが、
いつ頃からか、広い範囲の地名になったようだ。
明治に発見された道ノ尾温泉が有名に
なった影響だと思うのだが、よくわからない。

道ノ尾温泉は、むかしは外国人も訪れるほど
大繁盛したらしい。創始者のオヤジは、地域に
いろいろ貢献し、近くに道ノ尾駅が出来たのも
彼のおかげだそうだ。詳しくはググられたし。
(あ、めんどくさくなったな!)

これは源泉。 温泉の近くの山は、「湯川」という小字地名。
現在は、寂れて銭湯風情の道ノ尾温泉だが、
長与町の歴史を作ってきた、大切な遺産だ。

「ミチ」を古代地名語源辞典で調べると、
「ミチ・ミツは「満ちる・一杯につまる」の
意味で、谷や湾の奥のつまった所か、と、自信
なさげなモヤッとした解説だった。
地名の末尾のオは、尾根か、又は地形の終わり
部分を示す「尾」の場合が大半。
小字の道ノ尾の場所は、尾根ではないので、
谷の奥の終わりの所だろう。
う~ん、「奥」と「終わりの所」が重複して
いる感じでちょっと違和感があるなあ。
だが、
道ノ尾が「谷の奥」にあるのは、間違いない!
そばにある浦上水源地は、かつては、
長く大きな谷だったからだ。

明治の帝国陸軍の地図(昭和初期に改定)より

Googleマップより
今は水源地になったこの谷へ、周囲の山々から
川の水が流れ込んでいる。満水になると下流側の
ダムから放水され、長崎バイパスの登り口付近で
川平(かわびら)川と合流し、浦上川へ流れこむ。


ダムから見ると、小字の道ノ尾は、谷の一番
奥まった所に当たることになる。

つまり、道ノ尾とは、
「谷の一番奥のどん詰まりの所」
という事らしい。
以上!
「え?そんだけ?」という話で、今ひとつ
へえ~と納得できる感じではない。
では、仕方がないので、私が変わりにへぇを‥、
ハイ。こかなくていいですよね?
そんなある日、
長崎県の小字地名総覧を見ていたら、長崎市の
潮見町にも道ノ尾という小字があるのを見つけた!

おお。これは貴重な同名の例だ。
一覧表には載っているが、地図には記載が無い。
すっ飛んで行って地元の人に場所を尋ねた。
人の良さそうな農家のおばあさんが、
海岸から続く大きな谷の奥の、
ブルドーザーの停まっとるニキ
と、ピンポイントで教えてくれた。

Googleマップ 3D地図より
谷の一番奥からぐるりと回りこんだ、もっと
高い所だった。県道はこの先で切り通してある
ので、開通前はここで行き止まりだったと思う。
総覧には、道ノ尾(みちのお)と書かれている
が、地元の人は、ミツノーと呼んでいた。
やはり「満つる」で合っているようだ。
満ちたあとはこぼれるので、「一番奥」ではなく、
「一番上の縁」というニュアンスかもしれない。
長与の道の尾も、背後にもっと高い所がある。
これでまあまあ、納得できそう。
話は浦上水源地に戻る。
以前、テレビで、浦上水源地のダム下の、
川の合流地点のところに、正体不明の神様が
祀られていると言っていた。

川の合流地点という地形状況から考えると、
水に関する神様ではないかと思い、今回見に
行ってみることにした。
水源地から急坂を下っていると、ダムの傍に
そびえる高い崖の上に水神と書かれた
鳥居が見えている。

おお、やはりそうかも!
下の祠は、その遥拝所的な所ではないのか?
期待はふくらむ。 股間‥、いや何でもない。
あーこれこれ! この小丘の上だ。
え~と、階段は‥?

ぬええ~?のわんじゃくりょわあ!!

登り口が、絶壁イィ~~~ッ!!
切り立った崖に、足を掛ける僅かなくぼみが
あるだけ。しかも土!鉄の鎖を伝って登り降り
するしかない!
確かに上に石造りの祠の屋根が見えるのだが、
簡単に近づけないもどかしさ。
5年前ならヒョイヒョイ登っていただろうが、
今は足が、腕が、いや鎖がもたんかも知れん!
(やせなはれ、やせなはれ!)
町なかで、崖から滑り落ちて泥だらけのまま
仰向けに倒れて失神するのはイヤだ。
仕方がない。
今回は、登るのは勘弁してやるぜ!
それにしてもなぜこんな、簡単に登れない
鬼階段にしているのだろう。
上に、特選エッチ本を隠しているのだろうか。
さて!今回の結論としては、
道ノ尾は、
「谷の一番てっぺんの行き止まり」
ということで、ピポロポ星の皇帝ウポポペロロ
様に報告するとしよう。
さらに類例を探したいが、ネットでアニメを
見なければならない。私はけっこう忙しいのだ!
そういえば‥、佐賀から福岡へ抜ける近道の
三瀬(みつせ)村も、山に囲まれた谷だよなぁ。
熊本県芦北町の道川内(みちがわち)も
両側に山が迫る、狭い谷間の川沿い。
うう~む。ならばあそこは‥。
こうしてまた、地名オタクの
夜は更けてゆくのであった。
参考文献:
古代地名語源辞典 楠原祐介 編
長崎県の小字地名総覧 草野正一 著
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