地名散歩 コウダ 長与町・諫早市
長崎地名的散歩
長与町に、高田という地区がある。

タカダではなく、タカデンでもなく、
コウダと読む。
江戸時代の書物「大村郷村記」を見ると、
昔は幸田と書いていたらしい。どうして
長与町民しか読めないような「高田」に
変えたのだろう。
敵の軍勢をあざむくための策だろうか?
諫早市の日の出町と飯盛町には、どちらも
香田と書くコウダ地区がある。
これらのコウダ地名がどういう由来なのか、
今回もひとつ、探ってみよう。
古い地名の文字は、当て字の場合が多い。
それを前提として考える必要がある。
○○田という地名の田(ダ)は、大抵の場合、
場所を表すド(処)のことと言われている。
コウが何なのかが問題だ。
コウの候補をネットのGoo辞書で探した。
巧、甲、江、耕、抗‥ ハッ!
肛だろうか!?
こう【×肛】しりの穴。「肛門/脱肛」
[音]コウ(カウ)(漢)
いや、違うような気がする‥。
さぁ、怒られるのでこれくらいにしておこうか。
まずは、地名由来の大半である地形について、
それぞれの共通点を探すことにしよう。
①長与町の高田は、小山がたくさん並ぶ土地の
真ん中に細長い谷の平地が続いており、そこに
県道33号線とJRの線路が通っている。

Googleマップ 3D衛星写真より
市街地と長与方面を結ぶ重要な交通ルートで、
新たに駅が出来た事もあり、山裾は切り削られ、
住宅地がドンドコドコドン増えている。

②飯盛町の香田は、山の中の小さな農村集落。
麓から見えない隠れ里のようなところ。

集落の真ん前にある、丸い小山が印象的。

Googleストリートビューより
③諫早市日の出町の香田は、福田川沿いに広がる
細長い稲作地帯の中程にあり、日の出町の尾根の
方へ登る急坂の下あたり。香田公民館がある。

少し下流に、「香田」の小字地名もあるが、
地形的に特に変わった様子は見られない。
①と②に、「小山」という共通点があった。
小山のことをコウというのだろうか?
辞書を見ても、ネット検索しても見つからない。
あーっ! ひょっとこして、
コブか?
調べたら、昔は、かふ、こふ、かう、こう、と
書いて、すべてコウと発音したようだ。
古代地名語源辞典を見ると、かふは傾(かぶ)く
で崖地のこととある。こふは、拳状に突き出した
所か、とある。
コブシというより、コブだろう。
そう考えると、大江戸八百八町、掛けてもつれた
糸のような謎が解けてくる!
長崎港にある女神大橋の西岸は、男神(オガミ)
または、神崎鼻(コウザキバナ)と呼ばれる。
鼻は地形用語で、先端の部分。
古くから神社があるので神崎だと聞いていたが、
なぜ、カン・カミでなく、コウと発音するのかは、
越中先生も、ヒロスケ氏も教えてくれない。
崖地なのも確かだが、岬の先っちょは丸く突き
出している。

神崎鼻=「コブ状の岬の先端」なら、
その形からも大いに納得がいく。
あとは、諫早市日の出町の香田に、コブ状の
地形の痕跡が見つかれば完了だ。
香田公民館の裏の傾斜地は、周囲と比較して
丸い形をしている。竹林が無ければコブ状に
見えるのではないか?
そう考えたのだが、実際に見るとコブとは
いまひとつ思えない。どうしたものか‥。
それからしばらく検討は中断したが、意外な
ところでヒントが見つかった。
大村市の寿古町には、好武(ヨシタケ)という
何かカッコいい感じの地名がある。
場所は郡川(こおりがわ)の河口近くで、流れが
ほぼ直角に曲がるカーブの外側のところ。

Googleマップより
ここは周囲の土地よりも少し盛り上がっていて、
標高9メートルの「高台」には城跡もある。
郡川が氾濫した際に、溢れた土砂が積もって
形成された地形に違いない。
元々は「コブ」と呼ばれていたのが、人間が
暮らすようになり、好武(コウブ)になり、読みも
ヨシタケに変わったのではないかと思う。
諫早市日の出町の香田も、川が曲がるカーブの
外側に当たり、増水時に溢れた土砂で、コブ状に
盛り上がっていたのではないだろうか。

Googleマップより
本明川の支流である福田川も、暴れ川であり、
昔からたびたび氾濫を起こしている。

長崎県の小字地名総覧より
小字地名の香田一ノ割、香田ニノ割‥というのは、
地割制度といって、洪水などで被害を受ける農地を
交替で使うことでリスクを均等にする事に依るもの。
この地名からも、氾濫の多い土地だった事が判る。
さらに、五島の五島市にも、高田(コウダ)町を
見つけた。ここも周囲に比べて盛り上がった所が
明らかに多い。

Googleマップより
地名の文字については、古い時代からたびたび、
「佳い字に改めよ」とお達しがあったらしい。
人間のこぶは病気の場合もあり、こぶ付きとか
言葉のイメージもよくないため、読み方がコブ・
コフからコウにされ、漢字も高や香や幸などに
変えられたのではないだろうか。
一応、「肛田」も探してみたが、残念ながら
見つからなかった。
(あってたまるかーい!)
コウダは、元はコブダではなかったか?
これが今回の結論。
長与町の高田は、もっと開発が進めば、凸凹は
さらに減り、古い地形は判らなくなるだろう。

地形地名の検討も、開発のスピードに比例して
どんどん難しくなってくる。
うちの近所も、新しい住宅地に道路に新幹線で、
緑色の土地がどんどん灰色に変わっている。
そして、神の森も仏の御堂も遥かに見下ろし、
天に向かい無遠慮に次々と聳え立つ高層住宅。
それはまるで、「古い時代」の墓標のように。

タカダではなく、タカデンでもなく、
コウダと読む。
江戸時代の書物「大村郷村記」を見ると、
昔は幸田と書いていたらしい。どうして
長与町民しか読めないような「高田」に
変えたのだろう。
敵の軍勢をあざむくための策だろうか?
諫早市の日の出町と飯盛町には、どちらも
香田と書くコウダ地区がある。
これらのコウダ地名がどういう由来なのか、
今回もひとつ、探ってみよう。
古い地名の文字は、当て字の場合が多い。
それを前提として考える必要がある。
○○田という地名の田(ダ)は、大抵の場合、
場所を表すド(処)のことと言われている。
コウが何なのかが問題だ。
コウの候補をネットのGoo辞書で探した。
巧、甲、江、耕、抗‥ ハッ!
肛だろうか!?
こう【×肛】しりの穴。「肛門/脱肛」
[音]コウ(カウ)(漢)
いや、違うような気がする‥。
さぁ、怒られるのでこれくらいにしておこうか。
まずは、地名由来の大半である地形について、
それぞれの共通点を探すことにしよう。
①長与町の高田は、小山がたくさん並ぶ土地の
真ん中に細長い谷の平地が続いており、そこに
県道33号線とJRの線路が通っている。

Googleマップ 3D衛星写真より
市街地と長与方面を結ぶ重要な交通ルートで、
新たに駅が出来た事もあり、山裾は切り削られ、
住宅地がドンドコドコドン増えている。

②飯盛町の香田は、山の中の小さな農村集落。
麓から見えない隠れ里のようなところ。

集落の真ん前にある、丸い小山が印象的。

Googleストリートビューより
③諫早市日の出町の香田は、福田川沿いに広がる
細長い稲作地帯の中程にあり、日の出町の尾根の
方へ登る急坂の下あたり。香田公民館がある。

少し下流に、「香田」の小字地名もあるが、
地形的に特に変わった様子は見られない。
①と②に、「小山」という共通点があった。
小山のことをコウというのだろうか?
辞書を見ても、ネット検索しても見つからない。
あーっ! ひょっとこして、
コブか?
調べたら、昔は、かふ、こふ、かう、こう、と
書いて、すべてコウと発音したようだ。
古代地名語源辞典を見ると、かふは傾(かぶ)く
で崖地のこととある。こふは、拳状に突き出した
所か、とある。
コブシというより、コブだろう。
そう考えると、大江戸八百八町、掛けてもつれた
糸のような謎が解けてくる!
長崎港にある女神大橋の西岸は、男神(オガミ)
または、神崎鼻(コウザキバナ)と呼ばれる。
鼻は地形用語で、先端の部分。
古くから神社があるので神崎だと聞いていたが、
なぜ、カン・カミでなく、コウと発音するのかは、
越中先生も、ヒロスケ氏も教えてくれない。
崖地なのも確かだが、岬の先っちょは丸く突き
出している。

神崎鼻=「コブ状の岬の先端」なら、
その形からも大いに納得がいく。
あとは、諫早市日の出町の香田に、コブ状の
地形の痕跡が見つかれば完了だ。
香田公民館の裏の傾斜地は、周囲と比較して
丸い形をしている。竹林が無ければコブ状に
見えるのではないか?
そう考えたのだが、実際に見るとコブとは
いまひとつ思えない。どうしたものか‥。
それからしばらく検討は中断したが、意外な
ところでヒントが見つかった。
大村市の寿古町には、好武(ヨシタケ)という
何かカッコいい感じの地名がある。
場所は郡川(こおりがわ)の河口近くで、流れが
ほぼ直角に曲がるカーブの外側のところ。

Googleマップより
ここは周囲の土地よりも少し盛り上がっていて、
標高9メートルの「高台」には城跡もある。
郡川が氾濫した際に、溢れた土砂が積もって
形成された地形に違いない。
元々は「コブ」と呼ばれていたのが、人間が
暮らすようになり、好武(コウブ)になり、読みも
ヨシタケに変わったのではないかと思う。
諫早市日の出町の香田も、川が曲がるカーブの
外側に当たり、増水時に溢れた土砂で、コブ状に
盛り上がっていたのではないだろうか。

Googleマップより
本明川の支流である福田川も、暴れ川であり、
昔からたびたび氾濫を起こしている。

長崎県の小字地名総覧より
小字地名の香田一ノ割、香田ニノ割‥というのは、
地割制度といって、洪水などで被害を受ける農地を
交替で使うことでリスクを均等にする事に依るもの。
この地名からも、氾濫の多い土地だった事が判る。
さらに、五島の五島市にも、高田(コウダ)町を
見つけた。ここも周囲に比べて盛り上がった所が
明らかに多い。

Googleマップより
地名の文字については、古い時代からたびたび、
「佳い字に改めよ」とお達しがあったらしい。
人間のこぶは病気の場合もあり、こぶ付きとか
言葉のイメージもよくないため、読み方がコブ・
コフからコウにされ、漢字も高や香や幸などに
変えられたのではないだろうか。
一応、「肛田」も探してみたが、残念ながら
見つからなかった。
(あってたまるかーい!)
コウダは、元はコブダではなかったか?
これが今回の結論。
長与町の高田は、もっと開発が進めば、凸凹は
さらに減り、古い地形は判らなくなるだろう。

地形地名の検討も、開発のスピードに比例して
どんどん難しくなってくる。
うちの近所も、新しい住宅地に道路に新幹線で、
緑色の土地がどんどん灰色に変わっている。
そして、神の森も仏の御堂も遥かに見下ろし、
天に向かい無遠慮に次々と聳え立つ高層住宅。
それはまるで、「古い時代」の墓標のように。
スポンサーサイト