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田上(たがみ)近辺の高地を巡る

長崎地名的散歩
06 /22 2017
長崎市田上(たがみ)町は、山の上のジャンクション。



昔から交通の要衝ではあったが、近年には蛍茶屋から
小ヶ倉方面へ抜ける道路もつながり、混雑する市街地を
避けて野母崎や女神大橋へも早く行けるようになった。
山の上にある長崎自動車道インターにも近い。

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そんなわけで、ミーもけっこうクルマで通りはするのだが、
用事はないのでほとんど素通り。


さて、実は今回は、小島(こしま)から登ってきた前回の続き。
田上周辺の高地を散歩しつつ、地名を見てさるこう。
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子どもの頃、田上行きのバスがくると、指さして、
「田植え~!」ギャハハと笑うアホガキが必ずいた。
まあ、懐かしい思い出ではある。

しかしオトナになって、本当に田上(たうえ)という
名字があると知り、しかも長崎市長だと聞いて驚き、
数十年ぶりに「田植え~!」と言って笑った。

反省している。


「田の上」と書いてタガミだが、どこの田の上だろう。
途中は崖地ばかりで、畑ならあるが棚田はどこにも
見当たらない。

もしかして、タガミには他の意味があるのか?

そんな事は、今まで考えてもみなかった。
でも、考えた瞬間に判った。 

タガミはたぶん、地形通り「高まった所」を言う
「高み」の事だろうと思う。


普通、こういう所は、田尾などの、峠を意味する
地名が多いが、この近辺には見当たらない。

「小島(こしま)」と同様、ひねった地名シリーズか?


それにしても山登りで体が熱い。
冷たい炭酸飲料を飲みたくて酒屋の自販機に寄った。

ゴキュ!ビールがうまそう!!ああ~誘惑がぁ~!

いかん!そんな弱い心では悪魔につけ込まれるぞ!

はい、ノンアル。
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プシュぅぅ~!


田上には、合戦場(かっせんば)という古い地名が
あるのだが、山の上のさらに上の公園の所なので、
行きかけて途中で引き返した。 疲れるから。

大村軍と深堀軍が戦ったところと言われているが、
君はもうちょっと考えてから発言した方がいい。

両軍、鎧兜を着けて、山の上まで登って合戦?
たどり着く前にヘトヘトになってしまうだろう。
老兵だと途中で行先があの世に変わる。

合戦場という小字地名は、長崎県内の山の中
時々見かける。

とんでもない田舎にもあるので、たぶん地形地名
だろうと思って調べたら、どうも崖地の事らしい。

カッセンバを縮めると「カセバ」になる。

地名辞書には、カセは、傾ぐのカシと同義か、
と自信なさげに書いてある。
確かに「枷(かせ)」という字はカシとも読む。

何にせよ、カセは実際に崖地に多い地名らしい。

カセバという言葉があるのだろうかと調べたら、
「枷場」と書く人名がある事が判った。
「はさば」とも読むようだ。

名字があるのなら、その元の地名もあっただろう。

じゃあ、枷場(かせば)とは何か。

枷は、手かせ足かせの枷で、障害になるという
意味。 「スッゲー歩きにくい崖地」とか、
そんな意味だったかもしれない。

昔の刑具の「首かせ」というのは、上下分割した
木の板の合せ目に、首だけ通る切り欠きを
加工したもの。

垂直な大きい板の真中から、首が出た状態になる。
このかせが切り立った崖のようだからか。

グーグルストリートピューで確認したところでは、
確かに公園の下はえらい急坂で、東側は崖だ。
うーん、もう少し考えてみようか。



田上の近辺は、長崎の「高山ちほー」であり、
高くてやや平坦なところが細長く続いている。

平地が少ない長崎は、山の上にも街ができる。
ショッピングセンターや飲食店もセットだ。
病院も多いし、アイーン薬局もある。


円錐形の愛宕(あたご)山がある愛宕町
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アタゴは愛宕神社があるから地名も愛宕だと
思われがちだが、アタゴも元々は地形地名と
言われている。

アタ・アダは、あだける(落ちる)という古い
言葉から、崖や急斜面の事を言うそうだ。

ゴはよく判らないが、高い所を指す「タコ」のつく
地名はよくある。 アタ+タコの複合語である
可能性はないだろうか。


ホテル矢太樓(ヤタロウ)のある風頭(かざがしら)町
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ここは、笠頭(かさがしら)だったかもという説が、
一番濃厚チーズプリンだと思う。

カサは高い崖。その上の土地という事だろう。


北の方へ向かって進むと、白木(しろき)町
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白木のシロは、犬ではなく高所の平坦地。
キは場所のこと。

しかし、角川長崎地名大辞典では、白木町は
昭和になってつけられた町名だと書いてある。

長崎県の小字地名総覧にも白木は出てこない。

昔からの地名ではなかったのか?
意味は合っているのに、おっかしいな~と
思っていたら、長崎町尽しという本には、
古くからある地名だと書いてあった。

大手出版社の本でも、情報不足や間違いは
けっこうある。やはりいろいろ調べないと
何が正しいのか判らない事もあるようだ。


さて、白木町から田手原へ登るのだが、
思っていたより坂がきっつぅい!

これは失敗だ。クルマで通る時はぜんぜん
傾斜は気にしないので、考えていなかった。

まあ、距離は短いのでボチボチ登ろう。

つらいよう~ きついよう~ 飲みたいよう~
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田手原(たでわら)のタデはたぶん「タテ」で、
これも高所の平坦地の意味。立山なども同じ。

タ・デ・ワラ なのは、単にタテハラより
言いやすいのでそう変化したのだと思う。

原は、原野の事だろう。
地名がつけられた頃はまだ野っ原だったのかと
思ったが、現在もけっこう野っ原のようだ。
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そして、こっち方面の最後の目的地へ。

田手原からさらに峠をひとつ越えたところに、
重篭(じゅうろう)という農村集落がある。
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クルマで通る時、いつもバス停名が気になっていた。
古い地名で音読みというのも珍しい。
ジュウロウとは何だろうと考えるが判らない。

しかし、いつもとは逆に、漢字が正と仮定すると、
「重なった農地」とも読める。

これは、棚田や段々畑の事ではないのか?
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※篭は籠の略字 詳細は省くが、田畑の意味がある。
 「開拓農地」の意味が強いかもしれない。

航空写真とストビューで見てみると、たしかに
段々畑はある。

だがしかし!早合点承知の助はいかん!
よーく調べよう。

籠は(こもり)とも読み、囲まれた場所という
意味もある。
実際、周りを囲まれた地形であるのも事実。

それに、段々畑など珍しいものではない。本当に
大昔に開拓した手作りのものとかなら別だが。


類似の地名を探したら、佐世保市の世知原町に、
・十郎惣(じゅうろうそう)
・十郎木場(じゅうろうこば)
の、ふたつの小字を見つけた。
(その後、佐世保にあと2ヶ所あった)

それぞれ、古そうな段々畑がある!

・十郎惣 
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丘の下の方は整備された水田になっているが、
この辺りはいかにも古そうないびつな畑。

・十郎木場 (写真 右側)
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今は使われてない、効率の悪そうな畑。

これらは「囲まれた場所」では無かった。

う~ん。合っているのか、いないのか‥。


それを確かめるために、私は坂を登ってきた。
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石垣の石は、西彼杵半島でよく見かける
うすい板状の石が多い。
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不揃いなので、人力で集めたり掘り出したり
したものだろうと思われる。

段々畑は、いかにも開拓らしく手作り感満載。

石垣の部分に大岩。動かせないのでここを基準に
段々畑の高さが決まったのか。
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ここの開拓は大変な作業だったようだ。


重篭の集落から、谷を少し下った畑の遥か下に、
有料道路の料金所らしき所が見える。
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しばらくどこなのか見当がつかなかったが、
高速道路の長崎インターのようだ。
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山の上にあるのに、あんなに小さく見える!

GPSロガーは、標高270m前後を指していた。


ここを開拓した人達は、山の中で道具も充分には
揃わない中、苦労して畑を作ったように思われた。

そういえば、確か「苦労田」という小字地名が
どこかにあった。これに近いものか?

「重」には、重労働、重税など「容易では無い」
という意味もある。

「苦労して切り拓いた農地」と言う事が認められて
ついた地名の可能性はないだろうか。苦労を‥


ハッ!これはもしや、

苦労を通り越して、「じゅうろう」と言う事なのか?

(そんなわけ無かろう!


標高300mの峠をもう一度越えて町へ戻る。
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苔むしていい感じの切り通しを、涼し~い
風が、木の葉をさざめかせて吹きぬけていく。


白木町までスウィ~と下りて、矢の平へ。
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矢の平(やのひら)は、山の上からほとんど
真ーっすぐな谷が、麓の市街地まで続いている。
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地名の「矢」は真っ直ぐな様子を言う事が多い。
ヒラは平地では無く、崖や傾斜地のこと。
地形と地名が完全に一致する。

古い道は緩やかに曲がっているが、近年できた
バス道路は、名物になるくらいの一直線の急坂。
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間違っておむすびを落として転がってしまったら
どんどん加速していくに違いない。

最後は音速を超えて火の玉となり、麓で作業中の
バキュームカーのタンクに勢いよく激突して、
中身を全部ブチまけてしまうかも知れない!

昼めしは、転がらないカレーなどがいいだろう。


長崎の高地巡りはここまで。

実際に現地を見ないと傾斜具合や細かい点は判らない。
行けば何かしら発見がある。

自転車での山登りは大変だが、苦労して登った分、
景色もスンバラしく、弁当もウマシャス!
これは平地では味わえないもの。

そして、梅雨の晴れ間の山の上は、とにかく風が、
ヒョホホホホホ~と言うくらい気持ちよかった。
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矢の平の長い坂を下り、日見バイパスの峠を越え、
途中で本物のビールを買って、家に帰った。

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Ramblingbird

長崎南部の自転車散歩やどうでもいい出来事を、小学生ギャグを交えて書き散らします。お下劣な表現を含みますのでご注意下さい。