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地名散歩 畦別当(あぜべっとう) 長崎市

長崎地名的散歩
04 /20 2020
 諫早市から長崎市へ貧乏人がクルマで向かう場合、
有料道路の長崎バイパスを横目に険しい県道を行く
「川平(かわびら)越え」ルートがお財布に優しい。

 この峠を越えた所に、
畦別当(あぜべっとう)という、
モヘモヘに意味不明な地名の集落がある。
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 地形的には、両側を山に挟まれた谷が長く続く、
ゆるやかな傾斜地。

 昔は谷川沿いに田んぼが連なっていたが、現在は
自動車道路が町を真っ二つに分断している。

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長崎バイパスの向こうの家へは、高架下をくぐって行く。

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 この町には長崎バイパス路線用のバス停があり、
麻呂は高校生の頃、帰りにたまに乗るバスの車内
アナウンスで、畦別当という地名の存在を知った。

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 しかし当時は、この変わった地名の意味などを
考えるはずも無く「変なさ~ 汗べっとべと~」
などと、死ぬほどつまらんボケをつぶやくだけの
「長崎たわけもの」だった。

あれから40年!

 ようやく「畦別当」の謎に迫る時が来たようだ。

DSCF0512A.jpg


◎まずは、畦(あぜ)。
  
 畦は、一般に田や畑の周囲の通路の事を言うが、
「高くなった所」の意味がある。または「崩れる」
という意味の「アズ」が変化したものか。

 山の上の集落なので、当然高いところにあるが、
地形的に高い場所にある訳ではなく、むしろ谷間。

崖に囲まれた所なので、アゼは崩落崖だと思う。

◎そして、別当(べっとう)。

 「別当」というのは、昔の盲人の役職のひとつで、
検校(けんぎょう)に次いで、二番目に位が高いもの。

 しかし、ただでさえ不便な山の中に別当職の人が
住んでいたとは思えない。ベットウには、何か別の
意味があるはずだ!

ベッド、弁当、べっ甲、別荘、汗べっとべと、
ベトナム、便壺、ベートーベン。


う~ん。どれも関係ないような気がする。


 そして、あれこれ夏体みの研きゅうを重ねた
結果、ひとつの仮説にたどり着いた。

DSCF0555A.jpg

 これは「隠れ地名」ではないだろうか?


 長与の平木場郷に、隠川内(かくしがわち)
いう集落がある。地名の通り、入り口の両側から
迫る山に隠れて外からは見えない。

kakushikawachi01A.jpg
Googleマップ 3D衛星写真より

この「隠れて見えない」という地形状況は、広く
地名に取り入れられている。

 「隠れ谷」という呼び名の所もあちこちにある。

 カクラや神楽(かぐら)のつく地名も、隠れるの
意味の場合が多いらしい。

 「盲(めくら)谷」という地名は、辞書で調べると
「出口のない谷」だが、谷に限らず、盲〇〇という
地名は、その地形の状況から見て「隠れ」と同様、
「見えない、ふさがった」
いう意味で使われていることは明らかだ。


 めくらという言葉は、現在は差別用語であり、
パソコンで「めくら」と打っても「盲」とは変換
されないし、放送禁止用語なので、「めくら」と
言っても「め ピ ──!!」と消される。

 昭和生まれの人は、盲人を「めくらさん」と、
話の上では言ったが、差別していたのでは無い。
それが普通だったのだ。

 何かをふさぐための板は、工業製品であっても
めくら板などと表現されていた。めくらチェック
や、めくら印などは、今でも使われる用語だ。

まさか?と思って調べたら、現在はパソコンの
「ブラインドタッチ」も差別用語だそうな。

人に言われて嫌なことは言うべきではないという
のはよく解るが、これはもう、年寄り差別なのでは
ないかという気さえしてくる。

 つまり、時代は変わったということだ。

DSCF0559A.jpg


 地名は、長い歴史の中でたびたび、良くない
表現のものは、よい言葉や漢字に変えられた。


 人が住む土地が「めくら」では良くないので、
地位の高い「別当」などに変えるのが流行った
時代があったのではないだろうか。

 最高位の、検校(けんぎょう)という地名も、
他県には存在している。平坦な土地の場合もある
ので検証は必要だが‥。

 
 いろいろ書いたが、畦別当とは、
「崖に囲まれて見えない所」
だろうと思う。

 地形を確認するまでもなく、ここは山に囲まれ、
近くの高い山の上からでないと見えない。

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 長崎県の、他の地域の別当地名も確認した。
開発が進んだところは判りにくいが、大体が
山や崖に隠れていたと思える場所だった。
 (※座標はGoogleマップ検索用)

◎長与町岡郷 戸別当
32°50'39.6"N 129°52'17.2"E
 
◎時津町久留里郷 別当
32°50'04.7"N 129°50'16.4"E

◎時津町野田郷 左別当 ひだりべっとう
32°49'23.3"N 129°50'12.2"E

◎三和町宮崎郷 田別当
32°37'05.1"N 129°49'47.1"E

◎飯盛町里名 帆別当 ほべっとう
32°45'56.4"N 129°59'39.1"E

◎森山町唐比北名 別当、別当谷
32°48'24.7"N 130°07'38.8"E


 長崎市の中里町には、冗談ではなく本当に
弁当(べんとう)という、うまそうな
小字地名がある。※弁は旧字の「辨」

 よっぽど腹の減った人物が命名したのかと
思ったが、地形を確認すると、やはり病院の
ある手前の山に隠れて見えない所だった。

32°47'47.7"N 129°57'48.0"E
bentou01A.jpg
Googleマップ 3D衛星写真より

 ベットウが、ベントウに変化したのだろう。

 「隠れ地名」は、この他にもいろいろある。
機会があれば、股出していこう。

DSCF0552A.jpg


 「隠れ里」でまず思い浮かぶのは、平家の
落人伝説。長崎周辺でも、ちょっと奥に隠れた
ところや山の上の集落は、すぐ平家の末裔と
言われる。民衆はそういう物語が好きなのだ。

 隠れた土地に住む事情はいろいろあるだろう。
近隣の村との争いがいやになったり、遅れて
開拓を始めたため、便利な土地がなかったり、
あるいは実際に故郷を追われて来たり。
災害に、重税に、借金取り。
 
 今も昔も、民衆は何かを我慢して生きていく
という点に変わりはない。

 山の暮らしは不便で厳しいが、自由もある。

DSCF0563A.jpg

 何を捨てて何を選ぶか。

 本当に自分に合った生き方ができるのなら、
厳しくとも幸せなのだろうと、近ごろ思う。




参考文献:
 古代地名語源辞典 楠原祐介 編
 長崎県の小字地名総覧 草野正一 著

※畦の字が、よく見たら畔に変換されていたため修正しました。2020/4/25
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コメント

非公開コメント

おまっとさん!

セ、センセイ!
お帰りなさい。 あまりに休憩が長かったので、もう戻られないのかと。
危うくお気に入りフォルダの「おもしろブログ」欄から削除するところでした。

ハッ!...そうか、政府の要請に応じ「痔縮」なさっていたのですね。
よし、そうとわかればマヨネーズ味の座薬を尻に突っ込んで、復活の2月分から早速読み進めることにしよう。

では股!

Re: おまっとさん!

お久しブリッとでるワン!(タカラトミー)

長らくお待たせしまうま。恥丘全体がコロリで大変なことになっていますが、
もうすぐ子供用給食マスクも届くはずですので、慌てずにドーンと構えて
泥船に乗ったつもりで身辺整理をして遺書を書いているところです。

10万円もらったら新しいウクレレを買いたいと思っていますが、
非国民と思われるので誰にも言わないようにします。

では、がんばりませんが、股のご肛門をお待ちしています。

Ramblingbird

長崎南部の自転車散歩やどうでもいい出来事を、小学生ギャグを交えて書き散らします。お下劣な表現を含みますのでご注意下さい。