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地名散歩 松浦市 御厨(みくりや)

長崎地名的散歩
03 /20 2021
 長崎県北部の松浦市は、アジの水揚げ量が日本一を誇る水産都市。
 旬(とき)アジが名物で、アジフライの聖地と自称するほど。考えただけでも、ジュルリ‥ゴキュ! よだれかけが必要だ。
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    松浦市観光情報ガイド 松浦の恋

 松浦市は昭和30年の市制施行の際、公募で「淀姫市」になるはずだった。しかし、ここは往古、隣りの佐賀県伊万里市・唐津市エリアと共に、海の武士団「松浦(まつら)党」の一族が活躍した土地。その歴史を尊重して「松浦市」に決まったということだ。
 佐賀県民からすると、抜け駆けされたような格好になり、「ま~た、あいどみゃ大風呂敷ば広げてばい!」と批判の声が上がったらしい。
 まあ、そりゃそうだろう。
 最近、建設中の長崎新幹線の整備方式と負担金を巡って佐賀県知事がゴネていると言われた件は、実際は長崎側の勝手な判断と先走りが原因だと判明した。自分は、松浦市命名時のエピソードを思い出し、なんかスイマセ~ンという気分だった。
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     松浦火力発電所

 その松浦市に、御厨(みくりや)という町がある。

 御厨(みくりや)とは、古代に神様にお供えする料理を準備した建物の事。後には、その食材を調達するために置かれた各地の荘園(しょうえん)も、そう呼ぶようになった。
 御厨町の由来を調べると、伊勢神宮の荘園だったからと書いてある。
 ここはアジを始め、海産物の宝庫!なるほどそうだったかと納得しかけたが、いろいろ読むと、どうも話が一致しない。
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   港には、近くの島へ渡るフェリー

☆情報を整理しよう。
・御厨は、伊勢神宮の荘園だったため、御厨という地名になった。
・伊勢神宮の荘園と言うが、証拠は無く、実際はどこの荘園か判らない。
・肥前国松浦郡に置かれた宇野御厨荘(うのみくりやしょう)は、平安時代初期、現在の福岡、佐賀、長崎にわたる広大な範囲だったが、平安末期からは、上五島を含む、北松浦周辺に限定されていった。
・御厨町は、宇野御厨荘の中心地なので、御厨という地名になった。
・現在の御厨町は、宇野御厨荘の一部とも、別であるとも言われている。
・古くは「三栗野」や「御厨屋」と書いてミクリヤと読んだという記録がある。
 何が本当で何が本当でないか、よく考えなければならない。

 疑問点
・御厨荘の中心地だからと言って、その一村落に「御厨」という地名をつけることが可能だったのか。
・御厨荘が無くなったあと、御厨という地名をつけたとしたら、その動機はいったい何か。
・古代から良質な海産物が捕れたとしても、新鮮なまま都(京都)まで送ることができたのか。加工しても価値があったのか。農産物だった?
・ミクリヤは、初音ミクや逃げ恥のミクリさんと何か関係があるのか。
・もしかして、ミクリヤには別の意味があるのではないか?

 フーム、これはどうやら、地名特捜班3係の出番のようだね。 
 まず、ミクリヤを分解。ミ・クリ・ヤと分けるのが日本語として自然だろう。
 先頭のは、地形地名では大抵が「水」または「3」を指す。
 クリは、「刳り(抜く)」。
 は、「谷」「湿地」が多い。
 「水がくり抜いた谷や湿地」という解釈が成り立つ。

 さて、実際の地形はどうだろう。
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 おお!合ってんじゃーん!!
  
  確かに、御厨町周辺に広がる溶岩台地のあちこちに、雨水が刳り抜いたに違いない侵食谷が並んでいる!
「ミクリ」だ!
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 いきなりだご、いや、いきなりだが、これが答えではないのか?

  さらに、長崎県の小字地名総覧で、御厨町の中心部に近い台地の上方、寺ノ尾免に、「水繰(みずぐり)」という地名を見つけた。
 おいおい、これは「ミクリ」とも読めるぞ!!
 
 水繰とは、日本古来の木造建築で、石の土台と壁の横木が接する部分に狭いすき間を設けることにより、木材への雨水の吸収を抑えて長持ちさせる技法。
 何かそんな感じの地形なのか?とGoogleストリートビューを見るが、さにあらず。しにあらず。すにも、せにもあらず。
 う!ココもやはり、台地の斜面を水が削って出来た、「水刳り(ミクリ)」地形。ひらけた野に、幾重にも重なった田んぼの畦が、美しい弧を描いている。
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 ミクリに「水繰」と当て字をしたため、読み方も変わったのではないか。

「クリ」のつく地名は各地にあり、大抵が刳り抜いたような地形になっている。
・長崎市香焼町 栗の浦 海岸でよく見られる、丸く囲まれた地形。
  32.689893, 129.793741
・大阪府枚方市 三栗 淀川に支流が流れ込む低湿地だった所。
  34.837459, 135.659197
・諫早市小川町 小栗(おぐり) 山の尾根が大きくえぐれたよう。
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  32.830486, 130.062067
 
「栗谷(くりや)」という土地の地形は、やはりほぼ「刳り谷」になっている。
・川崎市多摩区 栗谷 傾斜した台地に谷が彫り込まれている。
   35.611229, 139.537057
・東京都町田市金井 栗谷 
   35.578386, 139.469927
静岡県の御殿場は、昔は御厨(みくりや)という地名で、何本もの川が集まって流れる氾濫原。川が深く彫り込まれている。
 水が刳った湿地「ミクリヤ」だったのかもしれない。

 ミクリヤ地名は、本当に御厨荘に由来する場合もあるだろうが、地形由来の可能性もありそうだ。
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    姫神社 伊勢神宮の分霊として天照大御神を祀る。

 では、松浦市の御厨(みくりや)という地名の成り立ちを想像してみよう。
 ポワワワ~~~ン
 最初は、溶岩台地を水が侵食した地形に「ミクリ(水刳り)」という地名がつけられた。なだらかな傾斜の台地が続く所は、「ミクリノ(三栗野)」と呼ばれた。

 この近辺も含む、かなりだだっ広い範囲の荘園は「宇野御厨(うのみくりや)荘」と呼ばれていたが、やがて衰退し、範囲が限定されて行った。

 当時のミクリノの長は、「ミクリノはミクリヤと似とるせん、三栗野の「野〜」「ヤ〜」て読ませて、ミクリヤに変えられんやろか」と考えた。
 ここが「御厨の中心地だった」ということになれば、ステータスとなり、ハクがつく!イよっしゃあ!

 それで、検地の際、周辺の村々に抜け駆けして、「ここは元からミクリヤた~い!」と言い張り、ミクリヤに改名したのかも知れない。

あれぇ、どこかで聞いたような‥
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Ramblingbird

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