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地名散歩 釜蓋(かまぶた)

長崎地名的散歩
03 /10 2023

 雲仙市千々石町の海岸にそびえる、釜岳(かまだけ)。

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 真ん中のえぐれたような斜面の麓に「釜」集落がある。


 諫早市飯盛町 下釜(しもがま)

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 千々石湾に面した飯盛町は農業主体の町だが、古くは江の浦と言って、漁民も多かった。



「カマ」のつく地名は、小字地名を含めると全国に数多く存在する。


 地名用語のカマは「咬む」で、浸蝕された地形と言われている。釜底や竈門(かまど)のように、丸く彫り込まれた形の海岸によく見られる。


 地名では大抵「釜」の字になっているが、それは解りやすい字を当てただけで、本当は釜も竈門も関係ないのかもしれない。大事なのはカマという言葉。



 釜のつく地名に「釜蓋(カマブタ)」と言うのがある。


 釜と比べるとマイナーだが、小地域の地名は長崎県内にも結構見られる。


「カマブタ」と言えば普通、ブ厚い一枚板にゲタの歯状の取手が2本ある「羽釜のフタ」を想像するだろう。なので、「カマブタのような地形」と言われてもちょっとイメージできない。そんな形の自然地形など滅多にないはずだ。

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 ただ、カマブタという地名は海岸にも山の中にも存在するので、やはり地形地名である可能性が高いと思った。


 諫早市貝津町、長崎自動車道の諫早インター料金所付近にも、小字の「釜蓋」「下釜蓋」という地名がある。


 近所なので、通る時には眺めてみるが、釜蓋を思わせるような地形は見当たらない。


 何をもって「カマブタ」と言ったのだろうか。



 いろいろ調べてみると、江戸時代以前に使われていた釜の蓋は、薄くてゲタの歯一本のシンプルなものだった事が判った。米を炊く時は、重しの石を乗せていたらしい。


 また、長崎の島原半島や諫早市(旧北高来郡)では、蒸しものをする際の釜の蓋は、竹や草で編んだ椎茸のカサのような形である事を知った。

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 それなら自然地形でも充分有り得る。丸い台地の周囲を石垣で固めなければ、自然にフチが削れてそういう形になるだろう。


 単に「丸くて上が平坦な土地」でもいいのかもしれない。


 古来、島原半島や佐賀県では、結婚式で新婦の頭に蒸し釜の蓋をかざして口上を述べる「釜蓋かぶせ」の儀式が行われてきた。現在も一部では続けられているそうだ。

 結婚式で3つの玉袋がどうのというスピーチは聞いたことがあるが、これは実際に見たことはない。


 ということで、長崎周辺の釜蓋地名の土地が、この「肥前釜蓋」のような丸い台地状の地形かどうかを確認するため、あっちゃこっちゃを、うろんころん見てさるいた。



 諫早市貝津町の釜蓋・下釜蓋は、周囲の地形の起伏が激しい上に、宅地開発も進んでいて特定が難しい。しかし、昭和23年の航空写真を見ると、それらしい地形が写っていた。

 釜蓋と思われる所は、角ばってはいるが、高く突き出して上が平坦に見える。下釜蓋らしき所は、現在は住宅の造成などでだいぶ削られている。

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 「釜蓋」と思われるところ。詳しく調べる前に集合住宅が建ってしまった。

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 雲仙市千々石町の、釜蓋城があった橘神社奥の高台も、やはりそういう地形と言えそうだ。

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  ※googleマップ 3D地図より

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 雲仙市国見町は、淡島神社の近く。「釜蓋」は尾根の先端辺りにアパートが建つ高く丸い部分のことか。「東釜蓋」はそこから少し奥に入ったところ。はっきりココと特定できないが、流曲する川岸が高くなっている所が複数ある。

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 熊本県天草市天草町大江の海岸にある「釜蓋」は、航空写真を見ると岩礁の一部が円柱状になっているようだ。国土地理院の地図で標高を確認すると、丸い部分は周囲より1〜2m高い。現地に行って確認したいが、道がない断崖の下なのでちょっと無理そう。

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 対馬市峰町の海上に浮かぶ「釜蓋瀬」は、船が座礁しないよう警告するための灯標が立つ、丸い岩礁。海上保安庁の写真を見ると、椎茸の傘のような形。

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  ※海上保安庁HPより https://www.kaiho.mlit.go.jp/


 新上五島町桐古里郷の「釜蓋」は、海岸近くの岩礁。真ん中に丸いテーブル状の突起があるが、岩礁自体の形を言ったのかもしれない。

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  ※Googleストリートビューより


 南島原市南有馬町の「釜蓋」は、河口近くの低地。ほぼ平坦地で、高くなった地形は見られない。開発で崩されたのか。ただ、川の流曲部の内外はカマブタとカマの関係であり、内側の土地は円柱状になっている。

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 同じく、南有馬町の「先釜蓋(さきかまぶた)」は、「サキ」が謎だったが、原城跡の台地から伸びる尾根の先が丸くなった所を、そう呼んだのではないか。

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 土のままなので、フチが削れている。



 雲仙市吾妻町木場名の「釜蓋」は、「川のそばの田んぼの所」と地元の人に聞いたが、明確な釜蓋地形は見えない。しかしその周辺には、川の流曲部が丸く立体的になっているところが複数ある。長い年月のうちに浸食されて消えたか、農地整備で崩された可能性もあるだろう。

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 佐世保市野中町の「釜蓋」は、航空写真などで見ると、MR野中駅背後の斜面に、丸い棚状の地形が見えるがはっきりしない。ガソリンが安くなったら行ってみよう。

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 半分はGoogleマップ&ストリートビューと、国土地理院地図で見ただけなのだが、カマブタという地名は、やはり円柱状に高くなった所や、川の流曲部の内側が丸くなった所を指しているようだった。



 さらに、長崎以外の釜蓋も見てみた。


 佐賀県神埼市脊振町の「釜蓋川」は、川がコンパクトに流曲している所が何カ所もある。

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 福岡県大野城市の「釜蓋」は、釜蓋地禄神社のある土地が、明らかに円柱状になっている。

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  ※Googleマップ3D地図より


 九州から遠く離れた長野県安曇野市の「釜蓋」も、川の流曲部の内側。九州に集中するカマブタ地名だが、カマブタと言えば、全国的に円柱形をイメージしたらしい。

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  ※Googleマップ3D地図より


 そういう訳で、今回は「カマブタ」という地名の土地を見てきた。


 ちなみに、沖縄で蒸し芋に使う釜蓋は、植物を円すい形の笠のように編んだもので、方言で「カマンタ」と言う。

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 そして、それに似ている魚のエイも、カマンタと呼んでいる。


 「おまんた」と似ているが、無論、関係はない。


 鹿児島の南側、頴娃(えい)町に、有名な人気観光パワースポットの釜蓋神社がある。(正式名は、射楯兵主神社:いたてつわものぬしじんじゃ )

 頭に釜蓋を乗せて落とさないように歩き、うまくいったら願いが叶うという事で、若い人たちに人気らしい。

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   ※南九州市HP 鹿児島県観光サイト 鹿児島の旅より  


  自分は貧乏人間なので、ここに行ったことはないのだが、Googleの旦那様のお力をお借りして写真を見ると、神社は、開聞岳が美しい円すい形に見える海岸に鎮座している。



 ここはもしかしたら、民俗学者の谷川健一先生が言っておられた「エイを祖先神とする海人(あま)の一族」が、南九州一円の聖地として、エイ神に見立てた開聞岳を遥拝した聖地だったのではなかろうか・・


 そんな空想をしながら、さつま白波をひとり舐める夜だった。


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Ramblingbird

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