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「鬼」地名は何を意味するのか 鬼木・鬼池

長崎地名的散歩
07 /06 2023

 「鬼(おに)」のつく地名の土地では「恐ろしい鬼がいたから」という地名由来がよく語られるが、それをそのまま信じる現代人は居ないだろう。

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 実際に鬼がいたという記録があったとしたら、それはマタギと呼ばれる狩猟民や、サンカと呼ばれる山の漂泊民、山賊の類、あるいは、何らかの理由で森に隠れ住んでいた白人の大男などを目撃したものではないかと思う。
 
 そういう人達と山の中でバッタリ出会い、ビックラこいて「もひいぃい!鬼じゃあ〜!アポヒョヘヒ~!」とうろたえ、ジョバァ~と糞尿を漏らしながら女子供を置いて逃げ、大いに冷たい目で見られた者もいた事だろう。(そういうくだらん事を書くお前もな)


 確かに「鬼」地名は、山の中に多い。だがそれには別の理由があると自分は考える。
 「鬼」は形容詞として、強い・大きい・ものすごい・怖ろしいなどの意味に使われる。これらは漠然とした鬼のイメージで、
常人を超越した存在である事を示している。


 「鬼ババア」と聞けば、どういう人物かは容易に想像できる。優しい聖母のような女性を思い浮かべる人は多分いない。
 ひとつ謎なのは、おばあさんに「ばばあ」と言ってはダメなのに、なぜか「ばぁば」はOKという点だ。どうしてだろう。
(いやそれは地名とは関係が・・)


 確かに「ばぁば」の方がだいぶソフトに聞こえる。「ばぁば」と呼ばれ、怒って孫を殴る鬼のようなおばあさんの話は聞いたことがない。
 「鬼ばぁば」だと、怖いのか優しいのかちょっと微妙。いやでも何か裏がありそうで、やっぱり怖い。
 うーん、日本語は奥が深いのう~。
(いいから早く進めんかい)


 地名では、大きな洞窟を「鬼の窟(いわや)」と言ったり、広い一枚岩の岩礁を「鬼の洗濯板」と言ったりする。
 近頃の若い衆も、鬼デカイとか鬼ウマイとか言っている。オトナもそれに迎合し、ネットニュースやテレビも遅れまいとマネをする。ああ、鬼嘆かわしい!


 近年、自然災害が続き、「鬼」地名は「土砂崩れなどが起きやすい災害地名」と解釈する説も見るようになった。しかし、ただ「怖いから鬼」では、地名の説明にはならない。
 それに、鬼は地獄で死者を拷問はするが、災害につながる「破壊」のイメージはあまりない。

 古くからの日本の神は、本来、自然の中にいる目に見えない存在だった。「畏(かしこ)きモノ」と呼ばれ、人々に敬われると同時に怖れられた。
 福を授けることもあるが、怒れば災いをもたらす。それは、自然の姿そのもののようだ。


 平安時代くらいに伝わった陰陽道では、北東(丑寅うしとら)の方角が鬼門とされたことから、鬼には牛の角があり、虎の皮のおぱんちゅを履いて金棒を持っていると考えられた。そして現在のような姿が定着したらしい。

 3人並んで座って1人がウクレレを持っているのは、昭和ごろに出来たイメージのようだ。(それは雷さまだろうが)


 アニメ鬼滅の刃でも描かれているが、人間が、自らの激しい怒り・恨み・嫉みなどの感情に因って鬼に変身するという考えは古くからあった。般若の面はその姿だ。


 日本民俗学の始祖 柳田國男は、鬼や妖怪は、祀られなくなった神が零落した(落ちぶれた)ものだと言った。
 神の恐ろしい側面が「鬼」になり、あのような姿で現されるようになったという事だろうか。


 鬼に関する考え方はいろいろあるのだが、地名になりそうな理由は限られている。
 
 鬼の元の意味は、隠(おん、おぬ)で、隠れて見えないものを指した。人が亡くなることを「隠れる」と言い、「鬼籍に入る」とも言う。鬼という漢字は、死者や死者の魂を表す象形文字なのだそうだ。
 
 地名の意味というものは、単純な理由である事がほとんどで、難しく考えるとどんどん外れて行く。先人たちもそう言っている。


 自分は、地名の「鬼」は、「隠れて見えない土地」を指している場合が多いと考えている。(やっと本題に入ったか)
 中には開けた土地もあるので、すべてがそうとは言えないが、西日本、九州、長崎では、その可能性が高そうに思える。

 実際の土地の状況を確認してみよう。
 
・長崎県東彼杵郡波佐見町 鬼木(おにぎ)地区

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 美しい棚田と手作りのかかしが有名な農村集落。

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 2つの山の間が狭くなったところの奥に入り口があるため、集落はその中に隠れていて外からはほぼ見えない。
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・長崎県雲仙市瑞穂町 小字 鬼木(おにぎ)
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 地形的には、行き止まりの細い谷の奥と、道が通っていない尾根の上。どちらも外からは見えない。 
 以前、「隠れ地名」だろうと書いた「布木(ぬのぎ)」も近くにあり、地形状況は鬼木とほぼ同じ。

・熊本県天草市五和町 鬼池(おにいけ・おんのいけ)

 雲仙市の口之津港から島鉄フェリーで30分。天草の鬼池港では、季節にかかわらず、サンタさんイルカのソリが迎えてくれる。

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 鬼池には、集落の奥に、細い谷底の平坦地が続いている所が複数ある。この細い谷自体が「隠れた土地」で、その所々にある窪地に水が流れ込んで、池や沼になっている。

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 以前の航空写真では田んぼだった所が現在は池になっている所もある。放置されると元の状態に戻るのだろう。

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 隠れた土地にある池。それが「鬼池」なのだと思う。

・島根県大田市大屋町 鬼村 
 山の奥に細い谷が続き、川が流れている。見事に隠れ里だ。
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・大分県由布市挾間町 鬼瀬(おにがせ) 
 山の間の土地に、大きくS字を描く川が流れている。曲がっている事もあり、外側からはまったく見えない。
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・熊本県人吉市鬼木(おにぎ)町
台地の上は迷路のような地形。台地と台地の間に隠れた細い谷に鬼木川が流れ、川沿いに田が作られている。 
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 「鬼地名」は、開けた低地の川辺にも見られる。
・福岡県豊前市鬼木(おにのき)

 ふたつの川が合流してまた分かれている。水路とため池が多い低い土地だ。

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 このような土地の場合は、もしかしたら、河川氾濫で田畑が「水の下に隠れてしまうところ」であることを言ったのかもしれない。
 ざっと調べたところ、やはり氾濫が起きる地域のようだった。


 もしそうだとすれば、鬼地名が崖下にある場合は、過去の土砂崩れで「埋まって隠れてしまった土地」ということも考えられそうだ。


 それぞれの土地の状況や地名の伝承をよく調べてみたいが、金もヒマもないので、今回はこれくらいで勘弁しといてやる。


 では、今夜はキムチやっこを肴に、愛知の鬼ころしでも頂くとしよう。

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Ramblingbird

長崎南部の自転車散歩やどうでもいい出来事を、小学生ギャグを交えて書き散らします。お下劣な表現を含みますのでご注意下さい。